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おやすみ


「ふいー、疲れた」

なんて言って、あなたは暖房の効いたこの部屋のソファーに腰かける。

私にとっては広い部屋。

綺麗な模様の絨毯に、暖かい蛍光灯の灯り。ソファーがあれば、テレビだってある。何がないの、と聞かれれば、私は答えられない。

何をそんなに疲れることがあるの?

と、私は尋ねる。

しかしあなたは答えてくれない。寝てしまったのかな。暖房をつけっぱなしにして、電気もつけっぱなしで。

やれやれ、と呟く。私は暖房の消し方も電気の消し方も分からないから、とりあえずあなたの隣で寝ることにする。

不思議なことに今日は中々寝付けない。

あなたのように疲れていないからかもしれないね。

私の一日と言ったら、起きて、食べて、時々散歩でもして、また食べて、そして寝るだけ。別に変だと思ったことはない。私には、それが当たり前で、それしかしらないなだから。

暖かい部屋の中で、特に困難に立ち向かうことなく暮らしている。

特別なことといえば、たまにだけどあなたは私に相談してくれる。恋人ができたとか、その人と何をしたとか、別れちゃったとか、仕事が大変だとか、友人がクビになっちゃったとか、給料がちょっとだけ増えたとか、だから今日のご飯はちょっと高級だとか、他にも、他にも、他にも、色々。

私は大事なあなたの悩みだから、眠いのを我慢して真剣に聞いて、真面目に考えて、ちょっときつくなるときもあるけど真正直に答える。でも、あなたはそれを聞いて大抵、「あなたに話してもダメだよね」なんて私の頭を撫でて、私を抱き締めて、それでおしまいにしてしまう。

私としては気持ちを踏みにじられたようでいささか不快なのだが、撫でてくれたことでついつい許してしまう。

私も、またまだ子供というわけだ。

ともかく、そんな風に話してくれるあなたはいつも疲れていて、でも生き生きとしていた。悲しそうだったり、楽しそうだったりしても、変わらずに。

私はあなたに満たされたこの生活の中でさえも、そういう所が少し羨ましくなるのだ。だって、あなたのように変化がない、まっすぐで平坦な道なのだから。時々は、山にだって登りたくなる。

考えていたら、何だか眠くなってきた。暖房がつきっぱなしだから、朝には喉がカラカラになっているかもしれないな。それは変化とはちょっと違うよね。

なんだかんだで、不満なんてないよ。

私の恋人なんて、屋根のある場所で眠ることすらままならないのだからさ。

私は満ち、満ちている。その分、あなたのように疲れることもないけれど。

それはそれで、幸せな夢の世界へ。

「おやすみ、また明日」

あなたの隣で、また明日。